上妻 世海『消費から参加,そして制作へ』のメモ
現代社会は「情報空間」と「物理空間」の相互生成から仮説的かつ瞬間的に構築される「現実空間」を特徴とする。
「情報空間」と「物理空間」はどちらが優勢でもなく,主従を常に入れ替わりながら相互に変化をもたらす。わたしたちは,主としてtwitterに情報を追記することもあれば,twitterのタイムラインの従として現実の身体を動かされることもある。そういう「現実空間」を生きている。
Pokémon GO は「情報空間」と「物理空間」の構造上の転回を「拡張現実」として可視化したし,仮想通貨 / Twitter / Brexis / Donald Trump にまつわる現象は「一つ正しい現実と間違った複数の虚構」という環境から「複数の虚構があり、各々がどの虚構に実在性を感じているか」という環境へと,わたしたちの身を置く環境がシフトしたことを示している。こうして「複数の虚構と実在性」の図式は,近代社会システムの虚構性を浮き彫りにした。
「情報空間」と「物理空間」の構造上のこの転回は,制作者の実践の環境をどのように変化させるか。まず①「観察から制作へ」次に②『人からモノへ→「人間を含むあらゆるモノたちが同一平面上で相互に制作し合う」』よう変化し,さらに③『近代における制度や文脈を前提にしていたありとあらゆる物事は、再定義を要求される』。
現代の情報技術が可能にした現実空間
◾ポストインターネットとは「情報空間」と「物理空間」の境目が曖昧になった社会状況。ポストインターネットアートはその往来/横断を問題にするが,多くはサイバーパンク的な想像力の延長線上にあり,過去の想像力を現代の技術で実現することに終始する
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◾現代社会の特徴づけるのは「現実空間」/「情報空間」と「物理空間」の相互生成から仮説的かつ瞬間的に構築される「現実空間」。「情報空間」と「物理空間」はどちらが優勢でもなく,主従を常に入れ替わりながら相互に変化をもたらす。わたしたちはそういう「現実空間」を生きている。
eg. 主としてtwitterに情報を追記する⇄twitterのタイムラインに従として身体を動かされる
複数の虚構と実在性
◾Pokémon GO : 「情報空間」と「物理空間」の構造上の転回を「拡張現実」として可視化している
◾仮想通貨 / 脱中心的分散自立型システム / Twitter / Periscope / Brexis / Donald Trump
…「一つ正しい現実と間違った複数の虚構」という環境
→「複数の虚構があり、各々がどの虚構に実在性を感じているか」という環境へ。
◾「複数の虚構と実在性」の図式は近代社会システムの虚構性を浮き彫りにする
…近代社会システムは、「自由」という理念が労働力を売り渡すという自由すら内包することで、資本家/労働者という主従関係を隠蔽し、利己的な主体が功利主義的に利害計算することで、社会が調和するという神話によって保たれていた。
世界を認識する枠組みとしての制作
◾構造上の転回は,制作者の実践の環境をどのように変化させるか
①観察から制作へ
②人からモノへ→「人間を含むあらゆるモノたちが同一平面上で相互に制作し合う」
③近代における制度や文脈を前提にしていたありとあらゆる物事は、再定義を要求される
魅惑するモノたちの声
◾現前しているもの :〈今ここ〉→「謎/プロトタイプ/課題」
…モノから潜在的な形式や課題を引き出し,再度別の仕方で時間をおり返す
…制作者にとって、モノは「商品」という形に画一化、フォーマット化されない余剰を持っている。モノは情報へとデコードされ、再度情報はモノへとコード化される。
…構造上の転回後、世界を認識する枠組みは、消費から参加へ、そして制作へと、一般化しつつある
近代的な制度と文脈の死
人間は世界を安定的な定点から観察し消費するのではなく,人間を含むあらゆるモノたちが同一平面上に並置される世界において,モノとモノの媒介となり現実空間における機能や目的が転用され変容させる。
⇄ 鑑賞という特権的な態度の死 / 芸術の自律性の死
ref. メイヤスー の相関主義批判
無数の異なる身体のためのブリコラージュ
僕たちは神話的世界を再度、現代の技術によって別の仕方で蘇らせようとしている。人間は上からモノたちを観察し、消費する立場を失った。しかし、悲しむことは何もない。むしろ、人間を含めたあらゆるモノたちが能動的に、並列的に、自己制作的に、自律していながら、相互生成、共進化し、協働している世界が開かれているのだから。
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ref:上妻 世海『消費から参加,そして制作へ』2018年07月17日閲覧